東京地方裁判所 昭和46年(ワ)562号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕被告は、原告は本件自動車の運行につき共同運行供用者であつた旨主張するが、証人大木潔の証言によると、本件自動車は主として大木潔の通勤用に使用していたものであり、原告および亡景元は時々これに同乗する程度であつたことが認められるから、原告を本件自動車の運行供用者ということができない。而して、自賠法は、自動車事故による被害者として自賠責保険の保険会社に対し損害賠償額の請求をなし得る者のうち転用供用者もしくは運転者の家族を除外する旨の規定を設けていないから、原告は運転者大木潔の妻であり、亡景元は大木潔の子であるとしても、自賠法一六条による請求権を有しないとすることはできない。なお、円満な夫婦親子間においても、その間に不法行為が行なわれた場合、損害賠償請求権が発生することはいうまでもなく、特段の事情がないかぎり、その権利の行使を許されないとすべき理由がない(最高裁判所昭和四四年(オ)第七二二号昭和四七年五月三〇日第三小法廷判決参照)。ただ、第三者間の不法行為の場合と対比し、慰藉料額の算定につき特に考慮すべき点があるにすぎない。被害者が自動車の無償同乗者であるとしても、その理を異にするものではない。
<証拠>によれば、原告は本件事故により顔面骨折、頭蓋骨骨折、顔面瘢痕、前歯欠損の傷害を受け、昭和四四年一二月一四日から昭和四五年二月一六日まで六四日間入院し、その間付添を要し、その後約九ケ月間通院し(実治療日数二五日)、漸く症状固定したが、顔面瘢痕、開口時の痛み、頸部瘢痕(七級の一二)、および前歯上下一、二番欠損の後遺症が残つていることが認められる。
そこで、原告が被告に請求し得る額について算定すると、別紙のとおりとなる。
右算定にあたり、原告と加害者大木潔とは円満な夫婦である(証人大木潔の証言)点に鑑み、原告の傷害慰藉料額を加害者が第三者である場合と対比し、その三分の一程度に評価する。また、亡景元は、右両者間の子であつて、潔は景元を死亡に致らしめたことにつき原告と同様の苦痛を受けているのであろうことは推察に難くないことをも参酌し、母である原告の慰藉料額を加害者が第三者であつて慰藉料請求権者が一名である場合と対比し、六分の一程度に評価した。また、無償同乗を理由とする損害額の減額については、慰藉料についてのみ被害者が有償同乗者もしくは同乗者以外の者である場合と対比し、その二〇パーセント程度減額して評価した。
(坂井芳雄 新城雅夫 佐々木一彦)
(別表)
(1) 原告の治療費 468,854円(甲5〜7号証)
(2) 原告の付添看護費 87,400円(甲8〜11号証)
(3) 原告の傷害慰藉料
入通院慰藉料
後遺症慰藉料
(4) 景元死亡による原告の慰藉料
(5) 景元逸失利益の原告相続分
(6) (1)〜(5)の合計 193万4305円
(注 甲511号証は、証人大木潔の証言によつて成立を認める。)